皮膚科・美容皮膚科
ワキの多汗症(ボトックス療法)
ワキの多汗症とは?
多汗症とは、「体温調節の役割を担うエクリン汗腺の機能亢進により、全身性あるいは局所性に必要量以上の発汗が生じる疾患」を指します。その中でワキ(腋窩)に限局的に生じたものをワキの多汗症(腋窩多汗症)と呼びます。多汗症は汗腺の数、分布、大きさ、形態は健常人と同じであり、温熱性と精神性の2つのタイプがあります。腋窩多汗症の場合は情動刺激(精神性)、温熱いずれにも影響されます。
多汗症には原因により下記のように分類されます。
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原発性多汗症:明らかな器質的原因がないもの
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続発性多汗症:他の疾患、使用薬剤などの影響で発症しているもの
ボツリヌス療法の対称となるものは原発性多汗症です。
ワキの多汗症の診断基準
限局性局所多汗症の診断基準としては以下の項目に合致することが必要です。
ワキの多汗症(腋窩多汗症)でも同じように診断いたします。
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原因不明の過剰な局所性発汗が6ヶ月以上持続していること
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下記の6項目中2項目以上満たすこと
□両側性かつ左右対称性にみられる
□多汗により日常生活に支障が生じている
□週一回以上の多汗エピソードがみられる
□25歳未満で発症した
□家族歴がある
□睡眠時は局所性の発汗が見られない
ワキの多汗症の重症度判定
ボツリヌス療法を選択するには、重症度判定にて重症多汗症と判定される必要があります。
発汗量測定
定性的測定法(ヨード紙・ヨード液)
定量的測定法(重量測定法、換気カプセル法)
Hyperhidrosis Disease Severity Scale (HDSS)
自覚症状より判定する方法、3および4は重症多汗症と判定
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発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障はない
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発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
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発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
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発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
腋窩多汗症の治療
原発性腋窩多汗症の治療法として、塩化アルミニウム外用、抗コリン剤内服・外用、ボツリヌス療法、外科的手術、レーザー治療(マイクロ波治療機器(ミラドライ))が挙げられます。下記に示すアルゴリズムは日本皮膚科学会により作成された原発性局所性多汗症診療ガイドライン(日皮会誌: 田中智子ほか, 120 (8). 1607-1625, 2010)からの抜粋です。
当クリニックでは腋窩多汗症と診断された場合、アルゴリズムに則りながら治療をいきます。塩化アルミニウム水溶液、抗コリン作用有する外用剤(エクロックゲル、ラピフォートワイプ)、内服抗コリン薬(プロバンサイン、グランダキシン)などの処方も行っております。ボトックス療法の前に始めることも可能です。レーザー治療(ミラドライ)による治療を希望の場合、慶應義塾大学病院皮膚科に紹介いたします(費用は約35万円)。
ボツリヌス療法は指定された医療機関でのみ治療が可能です。
ボツリヌス療法を施行の流れ:初診時に診察・診断をおこない診断基準を満たした場合、後日予約にて治療をおこないます。当クリニックでは初診当日に治療を行うことはありません。
*本邦では保険適応となる塩化アルミニウム製剤はありません
**交感神経遮断術は重症、保存的治療に抵抗性で患者本人の強い希望があること。また、切断部位はT2を避ける事が望ましい。
ボツリヌス療法とは
ボツリヌス療法(ボトックス®注射)とは、ボツリヌス毒素の皮内注射により局所の過剰な発汗を抑制する治療法です。A型ボツリヌス毒素が神経終末におけるアセチルコリンの放出を阻害することで、エクリン汗腺への情報伝達をブロックし、発汗異常を抑えます。
ブロックされた情報伝達は4〜9か月程度で回復するため、発汗抑制効果を持続するためには反復投与が必要となります。平均的に半年ごとの投与をおすすめしています。
ボツリヌス療法の効果と副作用
ボツリヌス療法(ボトックス®)の効果は投与後2〜3日で発現し、1〜2週間程度で安定します。
そのため、治療後1〜2週間後に一度診察をおこない、治療効果判定をします。
副作用:腋窩以外の部位からの発汗(約2%)、四肢痛(約1%)
ボツリヌス療法の治療費
保険3割を適応した場合、1回の治療費は約25,000円になります。
初診料、再診料は別途かかります。