2018年デュピルマブ(デュピクセント)、2020年デルゴシチニブ(コレクチム軟膏)、経口JAK阻害薬3種類(オルミエント、リンヴォックなど)が適応になり、アトピー性皮膚炎の治療の幅が広がっています。さらに新しい作用機序を示す薬剤も色々登場しています。今回紹介するのは外用剤、注射製剤になります。
1. モイゼルト軟膏(ジファミラスト)
初めての外用PDE4阻害薬です。ジファミラストはホスホジエステラーゼ(PDE)4の活性を阻害します。PDE4は多くの免疫細胞に存在し、cAMPを特異的に分解する働きを持っており、アトピー性皮膚炎で増加した炎症細胞内にあるcAMP濃度を高めることでサイトカイン及びケモカインの産生を制御することができます。アトピー性皮膚炎の乾燥、かゆみ、炎症の原因であるサイトカイン、ケモカイン産生を抑えることで症状を改善させることが期待されます。副作用は現時点では少ないと言われています。
ステロイド、タクロリムス(プロトピック)、デルゴシチニブ(コレクチム)に加えて新たな治療外用剤として期待されます。
成人 モイゼルト軟膏0.1% 1日2回塗布
小児 モイゼルト軟膏0.03% 1日2回塗布(効果不十分の場合は0.1%を使用)
2. ミチーガ皮下注用60mg(ネモリズマブ)
アトピー性皮膚炎による瘙痒(かゆみ)を抑える注射製剤です。ネモリズマブは、サイトカイン(IL-31RA)を標的とするヒト化抗ヒトIL-31RAモノクローナル抗体であり、ステロイド外用、タクロリムス外用などの既存治療で効果不十分の場合に適応となります。通常、成⼈及び13歳以上の⼩児にはミチーガ皮下注用60mg1本を4週間の間隔で⽪下投与します。副作用は、アトピー性⽪膚炎、⽪膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、⼆次感染等)などが18%程度見られること、薬価111,1811円(3割負担で35,000円程度)と高価なことです。
かゆみが強く掻破により皮膚症状が悪化するアトピー性皮膚炎には有効性があると考えられます。
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